なかなか治らない咳 その1
よく風邪をひいたあと、いつまでも咳だけが残って相談にいらっしゃる方があります。 このようなときには、肺の機能を低下させている原因や、症状の違いをよく見極めて治療しなければなりません。 咳の原因と治療にはどのようなものがあるのか、それぞれのタイプに分けて考えてみましょう。...
なかなか治らない咳 その2
前回説明した「宣発」と「粛降」は協調関係にあって、一方が順調であれば他方も順調ですが、一方が失調すると他方も失調します。「宣発」と「粛降」の異常により、肺気が下降しなくなって上逆(じょうぎゃく)すると咳が発生します。 急性の咳...
なかなか治らない咳 その3
②風熱犯肺 風熱の邪が肺を犯し、粛降を阻害したために肺気が上逆する病態です。 ウイルスや細菌などによる炎症性の咳に相当し、年間を通じてみられます。 症状としては、咳や黄色あるいは粘稠な痰がみられ、咽痛・鼻づまり・黄色い鼻汁・頭痛・発熱などをともないます。...
なかなか治らない咳 その4
やや長びく咳 急性の咳から始まり、一週間から十日以上も持続する咳で、急性の段階から邪がやや深く侵入した病態です。 急性期の治療が不適切であったり、体質とのかね合いでひきおこされます。 ①肺熱 風寒の邪が体表を犯したのち体温によって化熱したり、風熱の邪が肺に侵入したり、または...
なかなか治らない咳 その5
②肺燥 肺熱や温燥が長期間つづいたために、邪熱が肺陰を灼焼したため乾燥し、邪熱と潤いの元の陰液の不足によって肺の粛降ができなくなって咳が続く病態です。 肺と気管支の炎症が持続し、粘膜の乾燥をともなった状態に相当します。 症状は、から咳・痰が粘稠で少ない・痰に血が混ざるなどと...
なかなか治らない咳 その6
慢性の咳 外邪との関連は少なく、多くは身体の中からの原因により身体の状態が変化して次第に出現する咳であり、おりにふれて反復したり長期にわたって持続します。 外因重視の西洋医学の治療ではほとんど無効であったり、かえって病状を悪化させる恐れがあります。 Ⅰ 痰濁阻肺...
なかなか治らない咳 その7
慢性の咳 ②脾虚生痰 慢性の咳ではよく見られる型で、慢性病・老化・飲食の不摂生で生じた痰湿の長期化などにより脾胃が損傷を受け、胃腸の機能が低下して水液の運化ができなくなり、停滞して肺に痰を生じた状態にあたります。 症状は、慢性の咳・出しやすい多量の白い痰に、元気がなく息切れ...
なかなか治らない咳 その8
③ 痰熱阻肺 痰が鬱積して化熱したり、もともと痰をもつ人が熱病にかかって化熱したり、肺熱が長期にわたったため熱が水液を濃縮して痰を生じたり、精神的ストレスで気鬱化火するとともに水液の停留をひきおこして痰が化熱するといった、さまざまな要因で痰熱が形成されて肺気を阻滞し、咳が続...
なかなか治らない咳 その9
肺虚 老化や慢性病、熱病などによる体力の消耗で、肺の機能や物質が不足した状態。 ①肺気虚 慢性病や老化などにより肺気が衰弱したり、脾虚生痰による痰濁の阻滞が続いて肺気が次第に衰え、肺気が不足して肺の粛降が充分にできないために上逆し、咳が慢性に続く病態です。...
なかなか治らない咳 その10
②肺陰虚 長期間にわたる炎症や慢性病、老化による消耗などで、肺の潤いである陰液が消耗したために肺気の粛降ができなくなって上逆し、咳が慢性につづく病態です。 水分不足や栄養不良などにより気道の分泌が低下して粘膜が滋潤されなくなり、少しの刺激でも咳がでやすくなり、その咳が刺激と...
なかなか治らない咳 その11
③肺気陰両虚 今までお話したことと同じ原因で肺気虚と肺陰虚の両方が同時に見られる病態で、単純な肺気虚や肺陰虚よりもこの病態のほうが一般的です。 気(機能)は陰血(物質)をもとに生まれ、陰血は気によって生成され運ばれるので、一方の不足が次第にもう一方の不足をひきおこすからです...
なかなか治らない咳 その12
肺腎両虚 老化や慢性病などの消耗により、肺だけでなく人の体の根源物質といわれる腎精までも消耗してしまった病態です。 前項の肺虚が持続して腎に及んだり、腎虚から肺へ波及することにより起こります。 ①肺腎陰虚 肺と腎の基礎物質である陰液が消耗することにより虚熱が生じ、潤いのない...
なかなか治らない咳 その13
②肺腎陽虚 肺と腎の陽気が衰弱して虚寒が生じ、肺気の虚弱による咳がつづく病態といえます。 主に機能面が衰えて、エネルギー代謝や循環の低下による寒冷症状をともなう状態に相当します。 症状としては、元気のない慢性にくり返す咳、白っぽい塩辛い味のする咳、動くとひどくなる咳など、肺...
なかなか治らない咳 その14
水飲犯肺 先天的に虚弱であったり、老化や慢性病によって体力の消耗が原因で、脾による水分代謝あるいは腎による水液の気化作用がよわり、体内に停滞した水湿が水飲となって、その水飲が三焦を流れて肺にまで上昇し、肺気の働きである宣発と粛降作用を阻滞した病態です。...
なかなか治らない咳 その15
肝気犯肺 精神的な抑うつにともなって肝気が鬱し、肝の疎泄が失調して肺に及び、肺の気の粛降を阻害して上逆させ、咳を発生させる病態です。 精神的ストレスによって起こされる神経性の咳の発作に相当し、緊張や激しい怒り、精神的重圧や心労などがひきがねになって発作がひきおこされます。...