こころの病 その11
考えすぎが内蔵の機能を失調させる
次に、思鬱傷脾によって起こるこころの病について、考えましょう。
ものごとを考えることは、からだの正常な活動です。
しかし、困難な問題をいつまでも解決できなかったり、心配ごとや悲しいことを考えたり、長い間単調な作業を強いられると、脾の機能が失調します。
また、脾の機能を調節する肝の疏泄機能が失調した場合にも、脾の機能が失われます。
脾の機能が失調すると、栄養分を肺に送る脾の「昇清」作用と、不要なものを大腸に送る「降濁」作用が乱れます(昇降失調)。
そのため、悪心や嘔吐、下痢、胃の脹満感、食欲不振、胸の脇の張り、ゲップ、酸っぱい水がこみあげてくる、といった症状が起こります。
飲食物から栄養分を吸収して全身に運ぶことができなくなるので、気や血の源が欠乏して、心が活動するおおもとが失われ、「心脾両虚」になるほか、本来栄養になるべきものが余り、「邪」に変化して湿熱を発生し、全身の代謝を妨げます(食鬱)。
また、水液代謝のバランスを維持するために行う水液の運輸や排泄の機能も失調するため、水液は停滞します(湿鬱)。
さらに湿鬱の状態が続くと、「痰鬱」になります。 情志によって脾の機能が低下したために起こる脾気虚の症状がある場合には「香砂六君子湯」を、さらに気鬱の症状が加わっているときは「柴芍六君子湯」が効果的です。
また、軽い食鬱の症状があるときには「防風通聖散」、湿鬱には「平胃散」と「二陳湯」あるいは「五苓散」か「胃苓湯」を使います。 痰鬱には「半夏厚朴湯」がいいでしょう。
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