中医学で考える不眠症とは その5
【不眠症の診断と治療】
不眠症の直接の原因は「火」
不眠症の直接の原因は「火(火邪)」です。
火は陽気が熱に変化したものです。
火は「外火」と「内火」に分けられます。
外火は熱病をさし、内火は過剰な精神の刺激による感情の変化によって生まれた火をさします。
いずれも実火ですが、実際には、陰液が不足し、相対的に余った陽気が変化した虚火がよく見られます。
火が生まれると、夜になっても陽の特性である動(興奮)の性質が静まらないために眠れなくなるのです。
心火が強くなる原因には、大きく三つのタイプがあります。
①「心脾両虚」や「心陰虚」などのタイプです。陰気に属する心血や心陰が損なわれたり不足すると、相対的に心の陽気が余ります。
この陽気が熱を帯びると心火に変わり、神を乱すために、不眠症が起こります(虚火)。
②ストレスによって臓腑機能が過剰に亢進し、生まれた火が神を乱すために、不眠症が起こることもあります(実火)。
③脾胃、特に脾の機能が失調すると、臓腑の活動に必要な栄養素が十分に作られず、心血や心陰が不足したり、体内で「痰」や「湿」が生まれます。
これらが熱を帯びて変化した「痰熱」が気の流れを妨げて神を乱す場合にも、不眠症が起こることがあります(本虚標実)。
それでは、次回からそれぞれのタイプについて、具体的なメカニズムと治療を考えてみましょう。