西洋医学が、ウイルスに目を向けてかぜをとらえているのに対し、中医学では、体質、からだの状態、からだをとりまく環境という三つの点からかぜを考えます。
正常な体力をもった人なら、一週間で治ってしまう軽い病気であり、発汗法を用いて治療するという点では、西洋医学と共通しています。
それでは、中医学的なかぜのとらえかたを、原因、治療法に分けて考えてみましょう。
人の体は、季節に合わせて発汗の仕方や皮膚の引き締め方を変化させ、体温調節をしています。
これは、同じ気温でも冬と夏とでは感じ方が違うことからも分かります。
春になっても寒い日が続いたり、夏になる前から異常に暑いと、かぜをひきやすくなるのはそのためです。
季節に合わせて整えたからだの機能と外界の環境があわなくなってしまうのです。
しかし、異常気象だからといって、すべての人がかぜにかかるわけではありません。
それは、人によって防衛力に差があるからです。
先天的な素質や、さまざまな後天的原因によって防衛力が不足すると、人はかぜをひきやすくなります。
防衛力不足には、防衛力自体が弱い場合と、その働きが乱れている場合に分けられます。
防衛力が弱いのは、先天的に虚弱であったり、慢性病、老化などの原因が考えられます。
しょっちゅうかぜをひき、いかにも体力がなさそうに見えるひとは、もともと防衛力が弱いことが多いのです。
逆に、ふだんは丈夫な人が急にかぜをひきやすくなるのは、防衛力の働きが乱れているからと考えられます。
その原因は、疲労、栄養のかたより、ストレスの蓄積、生活の不摂生などです。
また、激しい寒さや異常な熱気、長時間湿った環境におかれるなど、限界を超えた外因があるときには、どんなに防衛力が充実していてもかぜをひくことがあります。
中医学では、かぜの症状の違いによって、寒いかぜ、熱いかぜ、湿ったかぜ、乾燥したかぜに分けています。
寒いかぜとは、さむけが明らかで、のどが渇かない、冷たいものを嫌がるなどの特徴がはっきりしたかぜのことです。
他のかぜの場合、さむけはそれほど目だった症状ではなく、次第にのどが渇くなどの熱の特徴が明らかになってきますが、寒いかぜの場合は、たとえ熱があってもさむけが続きます。
熱いかぜは、発熱してのどが痛むことが多く、のどが渇くのが特徴です。
湿ったかぜとは、夏や初秋にひきやすい胃腸型のかぜのことです。
一般のかぜと同じような呼吸器症状とともに、ひき始めから吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などの症状が現れます。
乾燥したかぜは、中国の内陸部やシルクロードに近いところでよく見られます。
百日咳のように咳き込んだり、鼻や口が乾燥したりしますが、湿度の高い日本では少ないようです。
どのタイプにかかるかは、からだをとりまく環境とその人の体質、からだの状態によって異なります。
例えば、同じ環境下でも、ある人はさむけを強く感じ、ある人は汗をかき、発熱の状態も人それぞれというように、症状に違いがあるのがふつうです。
これは、もともともっている体質や、そのときのからだの状態の違いによるものです。
そのため、たとえ同じ寒いかぜでも、健康な成人と幼少児では治療法が異なりますし、老人、慢性病を患っているひと、過労で体力が衰えた人、妊娠や月経期の女性なども、それぞれ異なる治療法が考えられます。
中医学では、西洋医学のように、主としてウイルスに目を向けて考えるのではなく、「環境という原因が、からだの弱点につけこんで病気を発生させ、病気の力とからだの抵抗力が争うことによって症状が現れたもの」がかぜであると考えています。
そのため、それぞれの症候に合った治療法を選ぶことになるわけです。
では次回には「かぜの中学的治療法と予防法」について勉強してみましょう。
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