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  • 執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その11

李老中医 危急重症難病治療経験


その11



2.高雄市新興区文横二路156-1号女青年周照晴、23歳。5年前民間の減肥薬を服用して10日余りで、下痢や反復感冒、激しい痙攣性の咳や全身倦怠が現れ、急速にやせ始め二カ月経たないうちに体重は10kgも減少し、最後には喘息になり歩くこともできなくなった。台湾榮民総医院でのCT検査では“特発性肺間質繊維化、右心臓肥大”と診断され何回も入院し多量激素療法をしたが無効だった。最近3年で自発性気胸が3回も起こり病状は急速に悪化、左肺の機能喪失し、右肺機能も僅かに1/5 あるだけで24時間人工呼吸器に頼り一年半ほどになる。肺移植の意見が出され家長が手術後の病人を訪ねたが、すでに9/10が死亡して最も長い生存期間が25カ月だった。絶望して遂に中医に治療を求めて大陸にやってきた。



  2000年7月10日8時初診:  


  患者は高雄から飛行機で香港・北京へ飛び、まわり回って晋(山西省の別名)へ入ったが、絶えまなく14時間酸素吸入をして激しい咳と喘息、冷や汗が滴り、顔色は暗い灰色で唇指は青紫、指は冷たく脈は急で促脈、脈拍134回/分、病勢は甚だ危険で救陽固脱が必要である:


破格救心湯の大剤に竹瀝4支、姜汁1杯(お猪口)を加え、お湯で薬を煎じ時間にかかわらず度々服用させる。



  7月12日二回目の診察:  


  上薬剤を24時間、昼夜分かたず2大剤を連続服用させ、当日は9時から服薬を開始し12時になって汗は治まり陽も回復し、咳は減って喘ぎもなくなったが脈は急で110~120回/分だった。当日の夜11時50分に痙攣性の激しい咳が約3分間あった。咳とともに粘っこい痰やよだれに痰の塊が少し出たあと一晩安眠できた。翌朝、寅の刻と卯の刻の交わる時刻にまた激しい咳がひとしきり出て、夜の子の刻になってまたしばらく痙攣性の咳があった。両日を観察し、患者は病歴が5年でやせ細ってはいるが、幸いなところ正に青年で正気がなお存在して胃気も良好だから死ぬほどことはない。ただ長患いが腎を傷つけているので、咳をすると尿漏れがある。引用される機気は全て“発作の起きる時”の一節にあり、これによって正気がどれだけ邪との交戦に耐えられるかが分かる。寅と卯の交わる刻、日が将に出ようとしている時は陽気が徐々に旺盛になる時刻で、ゆえに咳が短く痰が比較的多く出るのだ。夜の子の刻になって陰気が大盛となり陽気が陰気に負けると、咳が長くなり痰が出にくくなる。痙攣性の咳は正気が邪と抗うための必然で、また邪の出口だから、故に咳がでたら咳を止めてはいけない。治法は当に因勢利導、不正袪邪併重である。肺は嬌臓で、邪が深く入った慢性病を攻邪するにはゆっくり計画するべし。腎を温めて腎を助け固本によって腎陰を滋らし、極めてゆっくりと積み重なりを捜して除き、袪邪によって研磨をより推し進めて普通の状態にもっていく、緩やかな計画で病状が危機を脱するような方案が次の様である: 



 1.破格救心湯合瓜萎薤白半夏湯・丹参飲の随症加減: 


  附子150g、山茱萸肉90g、生牡蛎・活磁石・紫石英各30g、炙甘草60g、高麗参(濃汁を混入)・霊脂各15g、瓜萎30g、薤白15g、白酒100ml、生半夏・雲苓・鮮生姜(切)各30g、生山薬・百合各30g、制腎四味各20g、乾姜・五味子・桃杏仁・細辛・白芥子(炒研)各10g、竹瀝4支、姜汁1盃(混入)、大棗12枚、胡桃4枚(打)。


  水2,000mlを加え1時間浸してからとろ火で煮て450mlを取り一日3回に分けて服用。


 2.培元固本散変法長期服用: 


  大三七・琥珀・高麗参・花旗参・五霊脂・全胎盤・坎気・黄毛茸尖・冬虫草・霊芝胞子粉・蛤蚧・川貝・沈香・蔵紅花・全蠍・蜈蜙・土元・水蛭・炮甲珠・麝香(この薬は高価なので危急段階で10日間連用し、緩解後は蘇合香丸で代用し一回一丸、一日二回を10日間服用したら停薬する、気を消耗し陰を傷つけるから永く服用してはいけない。)


  これらを粉にして一日二回、一回3gを服用。


3.鮮山薬・鮮百合・鮮水慈姑・蓮子・薏苡米をもって食事の助けとし肺腎陰精を養う。


                                         続く

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