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執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その12

李老中医 危急重症難病治療経験


その12



  7月23日三回目の診察:  


  治療始めて12日、薬剤も12剤で、服用した附子はもう既に1900gに達しているが舌は乾かず口も渇かない、精神や食もよく納まり喘息もない、激しい咳の日が3回、痰は比較的よく切れるし、節気の時間的リズムに変化はない。背を突き通す胸痛もすでに大半はなくなり、腰の痛みも緩和され唇と指もすでに生き生きとした紅色で、晴れた日の正午には酸素吸入がいらないくらいになり、脈弦細、100拍/分。ただ始めて大陸へきて南北の温度差が比較的大きく、寒邪を受けて首肩背が石板で押さえつけられるように重苦しく気持ち悪い。傷寒の法則通り原方に葛根60gを加え太陽経の流れを利することによりもっぱら頚項部に効かせる。


  8月8日四回目の診察:  


  29日間の治療で附子をすでに累計5kg近く用い、一緒に培元固本散も服用させているが渇きも乾燥もなく、病の本質である虚寒は残っていない。病状は日増しに軽くなって食欲良好、精神状態も良く、首背のコリと胸背の痛みももうごく僅かになり、気胸再発の恐れもなくなった。晴れた日の午前中はほとんど酸素吸入はいらない。痙攣性の咳も減って一日二回それもごく短く1分間ほどで、一日の節気のリズムも開始当初からは変わって、寅・卯の刻もすでに咳はなく、真陽がようやく回復して元気も徐々に旺盛となる。脈拍も緩んで90拍/分、舌紅潤、両側の瘀斑も薄くなって舌下静脈も隠れたので、薬は証に合っていて変更すべきでなく、附子を100gに減らし一日1剤とする。


  8月16日五回目の診察:  


  三日連続して五心煩熱、気虚倦怠などの煩熱を自覚し口渇なく舌淡、脈虚数100拍/分。これは気虚発熱に属し、真陽がようやく回復したが大気が不十分なためである。原方に生黄耆240gを加え3剤。


  8月19日六回目の診察:


  煩熱は引いたがかなり胸悶を自覚。肺は嬌臓であり升補過多で高まり過ぎによる害となったので、他の薬剤は変えずに生黄耆を120gに減らす。


  9月26日七回目の診察:


  二か月と16日の治療を経て附子を合計9700g用いたが、なお元陽が回復し尽したとは言い切れない。おそらく高雄にいた時にやたらと石膏・茯苓・黄連などで、真陽が殆んど残らないほど傷つけてしまったのだろう。人身の陽気が傷つくのは容易だが回復するのは難しいということが、本例がその一例である。昼間は呼吸器を使わずにすみ体重も2.25kg戻り、顔色は紅潤となり臀部の大肉がそげ落ちたところも漸く豊満な形となり、前後では別人のように違う。今日CT及びX線検査の両方を対照してやはり左肺の機能は喪失していたが、右肺の機能は1/5から1/3まで改善した。立秋後に寒さを感じ痙攣性の咳が一度激しくでたが、かつて旋覆花代赭石湯を代赭石45gを増量して3剤与えたとき、服薬後咳は減ったけれど胸悶がひどくなった。肺は嬌臓だから降逆が甚だし過ぎると、耐えきれずにまた元に戻ってしまう。中医学の臓象学説は鍛えに鍛えられたものだから少しの誤差もないことが分かる。患者はすぐにでも台湾へ帰り養生したがったが、大病の初めは病状の変化が見られるので湯薬を急に止めることができない。二度目の診察時の処方から附子・山茱萸肉を30gに減らし、生黄耆を60g加えて益気運血し他の薬剤は変えないで服用を云いつける。別に漂海藻・甘草一対の反薬を各30g加えて、相反相激と磨積散結の力を強めるよう十日毎に7剤を服し、あわせて培元固本散を長期服用して体質増強を求め、緩やかに肺実質病変の改変を図る。もし思わぬ変化があれば電話で連絡するように云いつける。



2001年4月、すでに患者が台湾に帰って7カ月になるが、その母から11回電話で尋ねられ、症状に効く方薬を口頭で伝えると、病状は日増しに好転し体重もゆっくり増えて、子の刻における喘咳のリズムもすでに大体治まり、7ヶ月間で僅かに冬至前後に感冒を一回罹っただけで再び激しい喘息の発作は起きていないし、また晴れた日には街まで散歩に行けるようになったという。


                                           続く

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