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執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その20

李老中医 危急重症難病治療経験


その20



三消重症


  郭桂雲、女、33歳、霊石新華書店会計。1982年7月12日初診:病はすでに3カ月、食欲は倍増なのに日増しに痩せてゆく。顔色は白からだんだんと青黒くなった。昨日体重を量り5kg以上減ったので、とても心配になり治療を求めにやってきた。病歴を聞くと最近数カ月、仕事と家事の苦労が甚だしく時々空腹を覚えた。食後30分も経たないうちに排便しまた飢餓感が忍びがたく、心があたふたして眩暈もする。さらに喉の渇きが異常で、飲んださきから小便となる。最近10日ほどは空腹を覚えると直ぐに動悸・息切れ・発汗し、目の前が暗くなり眩暈がして体に力が入らず歩くこともできない。舌紅無苔、脈細数無神、尺部が最も虚である。内科検査では尿糖・血糖ともに(-)、眼球は突出してなく甲状腺機能も異常がない。病は疲労倦怠での内傷により肺脾腎三臓の気陰を傷つける壮火食気(陽気がきわめて盛んとなり、火熱が気を消耗し、正気を衰弱させること。)で、重症の消渇である。その顔色は白から黒に変わり、下元の不固により腎気が上浮となっている。滋陰補腎して陽亢を制し、下焦を固摂し腎気を補納する意味で引火帰原を以って治となす:


  熟地90g、枸杞子・山茱萸肉・塩補骨脂各30g、紅参(別にとろ火でゆっくり煮る)・天門・麦門冬各15g、油桂2g(粗皮を去り研磨した粉小米を蒸して柔らかくし丸めて呑む)鮮生姜5片、大棗10枚、胡桃4枚、3剤。


  7月17日二回目の診察:大変元気になり食欲も以前のごとくに戻り、口渇や多尿もまた7~8割減ったが、原方を3剤。


  7月20日三回目の診察:気化の病なので一気に改善させる。薬を6剤すすめ、諸症状はすべて癒える。青黒かった顔色もすでに紅潤へと変わる。朝は補中益気丸、晩は六味地黄丸を服用し後始末をするように云いつける。10年後訪れるも無病であった。その後私はこの方法で多くの糖尿病を治しまた速効があった。



虚寒型糖尿病


  李瑞亮、男、52歳、壇鎮人。1984年1月16日初診:糖尿病に罹って10カ月、かつてインシュリン分泌不能のコントロールをしていた。やせて7kgも体重減少し力が入らず、胃脘痛と酸っぱい涎を吐く。食事を嫌がり一日に僅か100gから130gだけ食べる。飲み物は多く一日にお湯を6瓶前後とり、尿も多く一日に35~40回でほとんどズボンの腰ひもを結ぶ暇がないほどである。悪寒が甚だしく荷物運搬用の小車に乗せられて来院した。目は充血して息切れし顔は真っ赤で、脈は右が微細、左は沈滑細。当日の化学検査:尿糖4+、血糖37㎎%。


  証は腎気腎陰の両虚に属し、陰損が陽にまで及んだ。命門の火が温煦を主どれず、津液が蒸騰し上達できなくなったので多飲となった。釜底に無火ゆえに胃脘は冷痛し、飲食を嫌がり嘔逆をする。腎気が統束力を失い、故に膀胱の機能は失調した。その上腎陰もすでに下において極めて虚となり、腎水も少なくなって竜雷を養えず、故に相火の上奔が現れ目の充血や赤面となった。腎が気を納められず息切れとなった。滋陰助陽、引火帰原、納気帰腎のつもり:


  九地90g(砂仁10gと撹拌する)、塩巴戟肉・天門・麦門冬各15g、茯苓15g、紅参(別にとろ火でゆっくり煮る)・呉茱萸・五味子・炙甘草各10g、山薬・山茱萸肉各30g、油桂1.5g


(研磨して呑む)、鮮生姜5片、大棗10枚、胡桃打4枚、3剤。


  1月21日二回目の診察:胃痛や吐き気、目の充血や息切れ、真っ赤な顔などはみな治った。食欲も改善し飲み水も減って一日にお湯一瓶ほど、尿も一日10回ほどに減少した。脈は前回と比べ力があり自分で歩いて来院した。方を守り3剤。


  1月25日三回目の診察:小便は日に7回となり夜間尿はなくなった。食事の量も500gまで増え行動も普段同様となる。舌紅潤、真ん中に裂紋があり脈沈滑。原方から呉茱萸を去り、生山薬・生黄耆・枸杞各30gを加え、豚の膵臓10g(別によく煮て湯液と一緒に肉を食べる)、10剤。


  1月26日今日の化学検査では尿糖++、血糖65㎎%。方を加減し調理してひと月余り、豚の膵臓は40個を用いた。尿糖はなくなり血糖も僅かに高いだけとなり、症状は穏やかで体重も回復してきた。油桂を加えた引火湯は本病の三多に対して特に有効である。症状が重ければ重いほど効果は速く現れる。



火不生土の糖尿病  


  李彩青、女、55歳、病歴7年。便溏が4カ月、顔色は暗灰色で口渇はなく、少腹が脹れて垂れ下がり痢疾の時は裏急後重となる。食べ物がのどを通らず、げっぷや酸っぱい液が上がる。舌質は紅、白腐苔があり脈は沈微。理中などを用いたが効果なし。火が土を生じないのは釜底に無火のためで、温腎陽が適当で三畏湯加味を与える:


  紅参(別にとろ火でゆっくり煮る)・霊脂・公丁香・欝金各10g、油桂3g(研磨して呑む)、赤石脂30g、附子・三仙炭・姜炭・炙甘草各10g、生山薬60g、3剤で癒える。


  その後培元固本散を百日連服して強固な体を得て、すでに5年になるが降糖薬は服用していない。

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