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  • 執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その22

李老中医 危急重症難病治療経験


その22



  注釈:この案例は中医の舌診に影響を及ぼすような、すなわち無苔舌が主病に関する、人を混乱させる一つの問題である。凡そ舌面が無苔で乾、或いは中心が地図の様に剥げたり、或いは舌が柿の様に紅かったり、裂紋が現れるなどどれもみな陰虚を主どっている。ただ臨床所見は気虚が少なくなく・陽虚が甚だしい亡陽に至る危険証の中で、この様な舌証の出現でもあり本案は即ち一つの典型的な病例といえる。当時病状は大変危険な状態でついには舌を捨て証に従い、すぐさま助陽解表・回陽破陰の辛熱大剤を投与した。その結果30時間以内に合計附子90g、麻黄・細辛・紅参・油桂各30gを用い、主証の解除と同時に舌上に薄白苔が生え始めそして津液が全体にいきわたり裂紋もまた癒えた。私は一生の間にこの様な舌証の病例に出会ったことが200例を下らないし、全部主証に従って相応の方薬を以って治した。長期観察を経て、すべて亡陽の状態に成っていて、かつ“陰虚舌”が見られる場合は四逆加人参湯を投与すれば、少ない時は4時間で多い時でも一昼夜で、乾紅無苔の舌(その中の殆どが絳舌)に苔が生え潤いも戻った。気虚が暫くして陽虚にまで及び“陰虚舌”が出現した場合、大剤の補中益気湯加附子30g、油桂10g、3剤で舌象の様相が変わった。肺結核・骨蒸潮熱にも陰虚舌が見られ、補中益気湯に黄耆60gを多量に用い、さらに烏梅・山茱茰肉・生竜骨・生牡蠣各30gを加え、甘温で大熱を除き土を補い金を生じさせれば、一週間で潮熱は退き舌象もまた変わる。



 一老婦人、76歳、右半身痺れ、膝から下が冷え足は浮腫み靴を履くことができず、口は渇かず飲みたくないし水を口に含んでも直ぐに吐き出してしまう。一眠りすると直ぐに目が覚め、舌は乾き動かすことができず、動悸や目眩がして再び寝入ることが難しく、脈遅細・舌乾紅無苔。大剤の人参真武湯を与え、3剤の後には浮腫は退き安らかに眠れて、舌上には薄い白苔が生え始め舌全体に潤い戻ったので、また大剤の補陽還五湯加附子30g、白芥子10g、全虫3g、蜈蚣2条を6剤服用後痺れも治った。


 


 一女性、22歳、両肺空洞型結核、骨蒸・潮熱が半月治らず舌光紅無苔・乾、遂には朱丹渓翁の滋陰退蒸法を用い、薬は亀鼈甲・青蒿・秦艽・黄芩・黄連の小剤を用いたが、子の刻になって大汗をかき四肢厥冷し、喘いで物を言うことができず便溏・脈微となったので、急いで張錫純氏の来复湯合大剤の参附龍牡救逆湯を投与し、30分後に危機を脱し舌上には薄白苔が生え始めかつ骨蒸潮熱も二カ月発症していない。



 一友人、45歳、舌の真ん中に5分硬貨大の光紅無苔があり、尿は熱っぽく頻繁だったので、知柏八味丸の5日間服用を命じたが無効、さらに無苔範囲が反って拡大し、かつ乾き裂けて出血や歯茎からも出血が現れ、脈を診ると沈細で口渇なく膝から下が氷の様に冷え、尋ねると最近異常に太り始め顔色も暗くなったというので、上の仮熱と下の真寒を断つために四逆湯1剤と附子30gを用い乾姜を姜炭に替えて与える。煎じてできたものは冷やして(上に熱があるので熱薬は冷たくして服用、盗渡上焦の法)、子の刻に頓服させると次の日には諸症はすべて退き、舌上には薄い白苔が生え始めた。



 一婦女教師、62歳、“乾燥総合症”を患って8年、最初に激素療法を用いたが無効だった。口は渇き潤いなく、水を多く飲めば飲むほど渇きは甚だしくなり、終わりには舌の渇きで動かすことができなくなり、唾液がないばかりでなく涙や鼻水もなく、陰道は乾きひび割れ、大便は乾結して羊の糞のようで、舌は豚の腎臓の膜を剥いだ様に紅く光り、唇は乾いて裂け口内炎が頻発した。かつて省内及び洛陽名医の中薬を数百剤服用したが、大体みな養陰増液の類、或いは辛涼甘潤、或いは養胃陰・津液保存で、何年も偏って用いられ無効だった。脈を診ると沈細微弱で、顔色萎黄艶がなく、四肢は温かくないだけでなく両膝から下は最も冷たい。そこで大剤の参附湯を以って命門の火を直に温め、蒸動を以って下焦気化の根である陽と陰を生長させ、附子は陽を通じて津液を与え、水を登らせ火を降ろす。そこで大剤の引火湯を以って佐とし陽を抱えることで真陰を増やすように、小量の油桂と米丸を呑服させれば引火帰原となって、10剤服用後には諸症状は退き舌上には薄白苔が生え始め津液も口全体に現れた。



 以上例をあげたが、四診には合参が必須であることが分かりそれで方を間違えることはない。舌診は一つの完成された学説を形成しているが、これは清代に温病学説誕生の後熱病による津液の障害であるので、温熱疫症にあって衛気営血弁証中特殊な意義がある。但し雑病中では、また種々の異常変局があり一概に論ずることができない。舌苔の生成はすなわち胃気の蒸化による。胃が虚なれば蒸化ができず、舌苔が反応できないのが真相である。そして人身気化の根は、下焦腎中の命門の真火にあって、この火が弱ければ火は土を生めない、すなわち胃気が虚となっている;金と水が相生できなければ、水液が全身に蒸騰流布することができない、故に舌乾無苔となる。左季雲氏《傷寒類方集参》の四逆湯方論の中に一段の話があって、陰陽気化の奥深いことについてずばり指摘している。その論説とは:“……附子は味辛大熱、経が言うには辛を以って潤いとなし、腠理を開発し津液を生じ通気するなり……”、“附子は津液を生ずる”、正に画龍点晴の筆であり、古人が発表していながらまだよく知られていないし、元来気はよく水を化すなり。明白なこの理論で、すなわち“乾紅無苔舌”の主病に対して納得がいった:温熱傷陰以外、雑病中に陽虚で気化が及ばずに、津液が蒸騰上達できないことがつまり病根である。真武湯はよく多くの余分な廃水を体外に排出し水腫を治す、すなわち四逆湯も津液を昇騰でき、つまり千古奇談ではなかった。清の末期、蜀(四川省)中の傷寒の大家鄭欽安氏はかつて唇焦舌黒・不渇少神の疾患を治療したが、これは真陽が断たれ極めて衰弱し津液を上に熏蒸できないためだった。鄭氏曰く:“当に陽気が一分縮めば肌肉は一分枯れると知り(李可注釈:正に陽生陰長であり、陽が減れば陰は隠れることの臨床活用)、これは舌黒唇焦ことの原因なり。四逆湯の力で先天の陽を回復させる、陽気がひとたび戻れば津液は升騰し枯焦は潤いたつ。”この治療で癒える。この証を微に入り分析すれば、悟る機会が訪れる。真假の間で疑わしければ更に弁証が重要な点になる。気化の理は、全て陰陽の二文字にある。一切の陰(四肢百骸、五官臓腑、津液水液)はみな静止的であり、古人はこれを“死陰”と謂った。唯ひとり陽の能力は霊動活発、生命の活力である。陽は統帥であって、陰は陽から生じ陽によって統められる。“陽気がもし空に昇る太陽であるなら、それを失うと長生きできないし明るくない。”下焦の一点である命門の真火が発動すれば、十二経は休まず循行し五臓六腑に気化が巡り、生命は生き生きとして進歩向上する。この火が一旦衰えると諸病が発生し、その火が灰となった時生命は終結する。先天の本の腎や生命の本原はこの火が拠り所である;後天の本の脾胃や気血生化の源もこの火が拠り所である。養生でこの火を損なえば長生きできず、病を治す時この火を損なえば命を落とす。附子は津液を招くことができ、気は水を昇らせる道理を知らないといけない。そして“乾紅無苔舌”が陰虚に属すとは限らないので、証に臨んで適切に弁証すること。                                        


続く

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