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執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その24

李老中医 危急重症難病治療経験


その24





  某、男、56歳、河南人、静升村で長年放浪生活。その一生を煙草と酒に費やした。3年前両下肢の血栓閉塞性血管炎で省二院において両膝を切断した。手術後すでに不具者になっていたが全ての思いが灰と化してしまった。自分で木版の車を作り、手を足の代わりに使い、日々喫茶店や酒場に出かけて行って一日酔っ払っては寝込んでいた。禁止にも関わらず一日に煙草を3~4箱吸っていた。手術後半年以上経って1964年9月17日、切った足の処が電撃様の激痛が始まり、周囲は紫紅色で潰れて爛れ膿水で悪臭がし、腐乱して骨が覗いていた。人を頼んで余に診療を求め、見た証が上の如くであった。六脈は洪大そして虚、舌紅少苔。最近2ヶ月は夜間に3度の心絞痛の発作があり救急によって危機を脱していた。意気消沈、何回も安眠薬を服用し、解脱を求めるがゆえに死にたがった、病痛は人生における一大不幸であり、穏やかな言葉でなだめ、酒と煙草を慎むように言い聞かせ元気を出させた。証は湿熱化毒に属し、血瘀気弱でまた真心痛を兼ね処置することが難しい。そこで《験方新編》四妙勇安湯合丹参飲を与え、清熱解毒・下病上取で生黄耆をたくさん加え益気托毒生肌し、生水蛭・炰甲珠で栓塞を破り、化瘀通絡して治とする。



  生黄耆240g、二花(金銀花)・元参各90g、当帰・丹参各60g、甘草30g、檀香・降香・桃仁・紅花各10g、砂仁5g、別に生水蛭・炰甲珠・醋元胡各6gを砕いて粉末にし、分冲して用いる


  洗面器で薬を煎じ濃汁1500mlを取り、6回に分けて日中4剤夜2剤服用させた。



  9月25日二回目の診察:患者には看護する人がいないので、平均二日に1剤の服用で2剤を服用した時、患部の灼熱感と激痛は消失した。4日目の午後には膿水が消失し5日目には崩れて爛れていたところにかさぶたができた。6日目には左側のかさぶたは剥がれ落ち、薄紅色の肉芽が見え心絞痛もまた癒えた。原方を更に3剤服用を言いつけ、ついに癒えた。それから3ヶ月経ってまた診療の要請を受けた。患部を見るとまた膿水が滴り落ち始め、周囲は紫黒で悪臭漂い、夜も寝られぬほどの激痛がある。脈を診ると洪大で無秩序、腰は折れるように痛みわずかに喘ぎ、そのように変わった理由を尋ねると決まり悪そうにして口を開かない。そのふしだらな行為を知ると、房室の禁を犯し腎気を傷つけ生命の根基を動揺させることが一年に60日ほどで、論じて治すのは口で言うほど容易ではないので、穏やかにお断りをした。ほどなくして故郷の親戚の者が原戸籍を取りに来たが、それまで亡くなられたことを知らなかった。


 


 注釈:本病は中医の“脱疽”の範囲に属し、寒湿の邪により血脈を痹阻し、永い月日で足の指の壊死脱落となり、悲惨で見ていられない。おおよそ陽虚寒凝と湿熱化毒の二型に分けることができ、瘀阻不通はどちらの型にも共有するものである。故に活血化瘀の法は必ず終始貫徹しなければならない。そして気は血の帥、気巡れば血巡る、なので寒熱を問わずみな黄耆が君薬である。気が旺盛ならば血行を推動させ、さらに生黄耆は托毒生肌に最も優れていて瘍の要薬でもあり、また脱疽に真っ先に選ばれる要薬でもある。その薬性は和平で効果をだすために特別大量に用いても無理がない。



  寒凝型には当帰四逆加呉茱萸湯烏頭湯を証に随って加減し、大辛大熱で開氷解凍すれば極めてよい効果がある。《傷寒論》で当帰四逆湯の養血通脈は手足の厥寒を主に治し、脈が絶えんばかりに細く(ちょうど血管炎で足部の動脈消失の特徴に合う)並びに経絡に寒が入りおこる腰・股・腿・足の疼痛を治す。古今の中外医家は色々な凍瘡を治療するのに用い、その治療効果は顕著に優れている。もし内に久寒があり血分に深く入って“沈寒固冷”の状態を形成していたり、また寒が収引を主どり経脈が攣縮疼痛するときは呉茱萸生姜白酒を加え、合わせて当帰四逆加呉茱萸生姜湯(呉茱萸は最善の解痙剤)とすれば更に良くなじむ。本病の病程は余りにも永すぎてただ単に血虚と瘀血だけでなく、その寒凝の程度は氷結の如くであった。そのため《金匱》烏頭湯の大辛大熱を加え用い、十二経表裏内外をめぐらせ開氷解凍し更に虫類の化瘀破超徴の力を加え、あたかも陽光の一照らしのように氷雪を消融し、栓塞を一通させ病を治癒に向かわせる。この法で寒凝型血管炎を7例、風湿性・類風湿関節炎・坐骨神経痛を数百例治した。西北地方病の“柳拐子”病(四肢間接腫大硬直後遺症)や部分硬皮症に対してみな優れた効き目がある。経方は世界的医学の難題に攻め勝つ一つの貴重な鍵であり、その効果は述べ尽くし難い。重要な点は経方の応用で必ず大量に用いることで、愚見であるが原方の半量を計量してよしとするのは、困難なことを避けて間に合わせにやっておくことでものの役に立たない(この点は80年代以後何回もの考古発現による漢代度量衡制が実証している)。



  熱毒型には四妙勇安湯が最も効くがさらに生黄耆を加え化腐生肌すればもっと速い効果がある。余は虫類薬の甚だ強い穿透攻破の力を用いて、活血化瘀が栓塞を破る手助けができ本病の難関を攻め勝ことができた。一切の創傷・瘍疽には皆当然のことながら房事は禁止である。もしその禁を犯せば軽くても癒合の後に黒い傷痕となって残り、酷ければ腎気が破れて死に至る、絶対にわざと人を驚かす話をしている訳ではない。



                                    続く

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