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執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その25

李老中医 危急重症難病治療経験 


その25



 余は中医臨床と探索にあたって46年、毎回急な危険重症例に遭遇し、毒劇中薬を使用して救治し起死回生の効果を獲得してきた。難しい涸疾を疑われる時もこれを用いて病状が直ぐに危機を脱し、しばしば長患いから起き上がった。その中で使用量の最も多いのが附子で一生に累計5t以上になる。その次が川烏頭でやはり3t以上で、治した人は二万名以上に上るが中毒は一例もない。調遺に従いこれを使って病を治し危篤を救いなおかつ人体に障害を及ぼさないようにするには薬中の猛将をいかに制御すればいいのか?《傷寒論雑病論》中にこの奥秘がすでに示されている。仲景が歴史上最も早く烏頭・附子剤を運用し、しかも使用頻度が最高である。仲景は方中烏頭・附子を多く生で用い、用量は大量で今は本当に少ない。無害の保証はあるのだろうか?全ての経方の配伍で炮制と煎服方法上で道理が見える。



  《金匱》の烏頭湯を以って例とする:本方は麻黄・芍薬・黄耆・炙甘草各3両、川烏頭5枚。川烏頭1枚は大小平均5gなので大体25gぐらいである。炙甘草3両については、漢代の一両は今の15.625gであるから合わせて16両では即ち48gとなり、丁度うまい具合に川烏頭の2倍となる。烏頭湯の煎服法にはまた深い意味が含まれている。まず蜜2升(漢代の1升は今の200ml)で川烏頭を煎じ、1升になるまで煎じたら川烏頭を去り蜜は用いるまで保存する。蜜で煎じた川烏頭は二重の意義があり、一つは蜜が百花の精華であり良く百毒を下す、とりわけ川烏頭の毒性に打ち勝つには一番、二つには粘調の蜜汁を以ってとろ火でこれを煮れば必ず毒性の分解に影響する。川烏頭の素早くて強く燥烈な薬性はそれだけで害をなすことはない。それから全方薬5味を水3升で以って煮て1升を取り滓を去って、煎じて穏やかになった川烏頭蜜と混合し再び煎じればなお一層毒性は中和される。もう一度服法を見る:7合を服す(140ml、全剤の2/3とする)。



  服薬後の効果を尋ねると:“知らずにこれを服した。”服用後の舌や唇が少しでも痺れを覚えれば“知る”とする。“知らず”とは――無の如くのこの感覚で、したがって“これを服用し尽した”すなわち残った1/3の薬液全部を服用し、“知る”を以って判定とする。一般病人は烏頭湯140mlを服しすぐに効果がある。体質異常者はこの量では病を中てることは出来ない。当然一剤薬全部を服用して初めて効果が出始める。余は《金匱》を読み烏頭湯の項に至り反復吟味し、深く感じたのはこれが必ず仲景が当時新しい経験や新しく試した身近な体験談で、憶測などでは決してない。仲景は1700年以上前にすでに臨床応用で烏頭・附子剤の成功経験を得ていた:その一、すべての烏頭・附子類方(附子湯を除く)において炙甘草を烏頭・附子の倍量使用している、甘草は善く百毒を下し甘緩でその辛燥を制御する:その二、蜜は川烏頭を制御し、蜜は百花の精華でもあり、芳香は甘醇・涼潤でよく百毒を下し並びにその燥烈を制御する:その三、余は薬を別に煎じて取った汁と蜜とを再び煎じることで毒性を中和し、烏頭の毒性を最低点まで降ろして使うが治療効果に変わりはない。



  上法に従って川烏頭を安全穏当に応用する。万に一つも失敗のないように確保し余は60年代から次の3条を具体的な方法として加えている:


  


  1.すべて烏頭剤を用いる時は必ず倍量の炙甘草と蜂蜜150g、黒小豆・防風各30gを加える;すべて附子が30gを超過して用いる時は原方にあるかないかを問わずみな炙甘草60gを加え監督制御を有効にすべし。


古今より各家は本草の論証を知識として得ている:


  炙甘草は扶正解毒し、烏頭・附子の毒を殺す。


  蜂蜜は補中潤燥、止痛解毒する。肺燥の咳嗽、腸燥の便秘、胃脘の熱痛、鼻炎口瘡、湯火熱傷を治し、烏頭・附子の解毒をする。


  黒小豆は活血利水、去風解毒し、水腫脹満、風毒脚気、黄疸水腫、風痹筋攣、産後風痙、口噤、瘍腫瘡毒を治し薬毒を下す。《本草綱目》:“煮汁は砒石・甘遂・天雄・附子・・・・・・百薬の毒を下す。”


  防風は発表去風、勝湿止痛する。風寒外感、頭痛目眩、項強、風寒湿痹、骨節酸痛、四肢痙攣急、破傷風を治す。《本草求原》:“烏頭・芫花・野菌諸毒を下す。”《本経集注》:“殺附子毒。”


  


  2.凡そ剤量が30gを超過した時、烏頭剤に水2500mlを加えとろ火で煮て500mlを取り一日3回に分けて服用し、3時間前後煎煮すればもう烏頭塩の劇毒の破壊に有効となる。慢性の心臓衰弱に附子剤を用いる時も水1500mlを加えとろ火で煮て500mlを取り一日に2~3回に分けて服用する。危急で瀕死の心臓衰弱の病人に多量の破格救心湯の用いる時は、即ちお湯にて強火で急煎し規則に縛られず煎じるそばから飲ませれば、たちまちの死から生命を救うことができる。この時附子の毒性は正に心臓衰弱の病人の救命仙丹でありいろいろ考える必要はない。


 


  3.余が凡て用いる烏頭剤について、必ず新しい臨床家に新しい煎薬の模範を示している。病人が服薬後は必ず見守り観察し、服した後の唇や舌の感覚を詳しく尋ねる。病人の安全無事を待ってからやっとその場を離れること。



  以上の三か条の保証があって、また配伍上煎薬の方法が上のように進歩改良されて、採取した全薬に蜜を加え一緒に煎じ、時間をかけて煎じれば治療効果は保証され、また安全穏当となって万一にも失敗はない。1965年に余は川烏頭の中毒に遭遇し瀕死2例を救急したが、それは生大黄・防風・黒小豆・甘草各30g、蜂蜜150gの煎湯で生緑豆粉30gを服用させ、どちらも40分以内に救活した。これによって反証ができ、新定烏頭湯の使用による中毒の心配は絶対にない。


  以上これは私が一生に運用した烏頭・附子剤による医学の難題の一つを克服した経験や心得であるが、青年一代中医臨床の参考に供するものである。



                               続く

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