李老中医 危急重症難病治療経験
その26
小児の急危重症医案
一、高熱驚風危険症
檀鎮塊樹源村、王章の子生後4ヶ月、1990年1月7日深夜2時、夫婦二人で子供を抱え治療を求め家までやってきた。近所の罹りつけの医院には危険な病であると通知され、地面に跪き起きない。余は急いで寝床から起きた。尋ねると急性肺炎の高熱で痙攣により入院、一昼夜経ってもコントロールできなかった。患児は高熱昏迷、体温39.7℃、歯は硬く閉ざされ身体は弓のように反り返り、両目は上に引っくり返り痰が鼻に集まって塞ぎ、約5~6分に一度頻繁に痙攣をおこす。唇指は青紫色、四肢は冷たく体は焼き炭の様で、紫紋は真っすぐ命関に繋がっている。証は風熱犯肺に属し、痰熱内結、熱極動風、邪陥心包。急ぎ三稜針で手足10本の両指先・両耳先・百会・大椎を点刺し出血させる。患児は大声で泣き始め全身から汗が出て四肢が温かくなったので、毫針飛針で点刺を涌泉・合谷・人中に、雀啄朮刺を素髎に約1分間すると患児は蘇生し痙攣も止んだ。先ず羚麝止痙散1gに麝香0.3gを加え服用するように命じた。詰まっていたものを通すために清熱熄風、宣肺滌痰、開窮止痙の剤。余が書いた手紙を持たせ城関院夜間薬房に薬を取りに行くように命じる。
生石膏30g、麻黄・杏仁・甘草・丹皮・紫草・天竺黄各10g、芦根30g、蚤休15g、竹瀝20ml、葶藶子10g、大棗10枚。
3時ぐらいに余が薬を煎じていると、この時すでに患児は乳を吸うことができるようになっていた。3時15分薬汁60mlを取り夜が明け始めて薬35mlと散剤を三回服し癒える。余った薬汁は不要で捨て去る。散剤2回分与えて余熱が再び盛んになることを防ぐ。夫婦二人は非常に喜んで帰っていった。
注釈:急性驚風(ひきつけ)は小児科の四大症の一つで、小児科では常に見られる急危重症に属す。それは1~5歳の嬰児小児に多発する。1歳以下の発病が最も多い。その勢いはひどく危険で知恵遅れとなり、重いと小児の命にまで危険が及ぶこととなる。本証の多くは実症・熱症に属す。小児は稚陰稚陽で臓腑もかよわく、臓気は軽やかで活発、伝変は最速、少しのことで直ぐに変わり全快もまた早いので、急性症には急治がよろしい。まずは針を刺し解熱開窮止痙し、病勢の伝変を阻止する。針刺が一つ終わるごとに病は少しずつ改善する。弁証を確かにしたからには方剤は多いほうがよろしい。小量を何回も小児が動かないように押さえつけて薬を与え、血中の薬の濃度を保つようにする。辺鄙で荒れ果てた所に薬をあげても簡単には変えられない、どちらかといえば多くを備え少し服用させる、学習し適当な程度を覚え病に的中したら直ぐに止め、余った薬は不要なので捨て去る、急用は備えがなくできないので病機は遅延してしまう。
この小児の病例は急性肺炎合併によるので、麻杏甘石湯を以って主となす。その中で石膏・牡丹皮・紫草の三薬を合わせて犀角の代わりに用いると、高熱を退かせる奇効がある。蚤休は清熱解毒であり熄風定驚の要薬で、ほとんどの毒蛇・毒虫の咬傷・疔瘡悪毒を治すほど解毒力は最強で、血分に入った病毒を清除し護心醒脳もできまた独特の止痙の効能があるので、方中の主薬である。竹瀝・天竺黄・葶藶子は清熱瀉肺滌痰、芦根は清熱養陰。羚麝止痙散(羚羊角3g、麝香1g、蝎尾12隻、蜈蚣2条を粉末にして3分割して服用)は余が小児の高熱驚風の救急に開窮醒脳として常に準備している薬である。軽症には単服で直ぐに効果があり湯剤を服す心配がない。もし小児が窒息の危険があるなら別に麝香0.3gを加えればその危機はたちどころに解消される。麝香によって呼吸中枢を興奮させるだけでなく、汚れを除き醒脳させ大脳の酸素不足を緩解させる。故に余は本病数百例の治療を経て、殆どは10時間以内に全快し後遺症は一例もない。もし乳積化熱で本病が引き起こされたら、保和丸にこの方を加減して与える;裏実なら釜底抽薪をするため大黄5gを加え、別に泡汁を混入して下痢をしたらこれは除く。小児の急なひきつけは外風・熱・痰・食でなく祟りであり、上方を加減して通を以って治すことができる。
続く
Comments