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  • 執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その29

李老中医 危急重症難病治療経験


その29



五、疹毒内陥



 Ⅰ、1963年春、霊石の麻疹大流行で余の長女李萍3歳、靳村の乳母の家にいて伝染病に罹り4日、病で危険と夜を通して余の家まで送り返してきた。顔色蒼白で暗い灰色を帯び、唇青く鼻翼は気ぜわしく動き、肩を持ち上げ腹を膨らまし、指は冷たく足も膝の上まで冷え、痰が塞いで昏睡状態になっている。尋ねると最初は発熱咳嗽、涙目くしゃみで、誤って感冒に罹ったと一針を打つと熱は退いたが咳が酷くなった。次の日また発熱したので再度針を打って止咳薬を2片服用させた。また二日おいて喘咳と昏睡で食欲なし。見れば耳の後ろにバラ色の丘疹があり、耳がやや涼しくなって中指だけが冷たい、これは確かに麻疹に属すことに疑いがない。体温36.5℃、時すでに4日過ぎて当に標識が現れ(麻疹は上から下に至るので、先ず耳の後ろにバラ色で針の先の様な丘疹ができ、手で探るとき邪魔になる。4日目から顔面に麻疹が出て標識となり、徐々に胸背に及び、四肢や手足の中心にも麻疹が現れて出揃うことになる。)、すなわち退熱薬の誤用によって正気を損傷し、疹毒の外透を阻止して肺を攻撃したため既に疹毒内陥を形成し、肺炎を合併して亡陽の危険な症状に直面した。麻疹の本質は陽毒であり、発熱は麻疹が内から外に達するときの必然の症状であり、また疹毒が外透する唯一の出路で当に因勢利導、升麻葛根湯を以って辛涼透疹する。少女は痩せ衰えて病が寒化・虚化から気虚陽虚が酷くなって、已に辛涼透疹の常法は用いることができない。もし密閉された疹が出ないと塞がり張りつめそして死ぬ。そこで益気し助陽宣肺する托毒透疹の法に決め、針と薬の併用とで内外を兼治する:



 1.紅参10g(別にとろ火でゆっくり煮る)、附子・当帰・葛根各10g、麻黄・細辛・杏仁・升麻・黒荊芥穂・炙甘草各5g、赤芍・生半夏・雲苓各10g(鶏冠血1杯、鮮芫荽1粒、麝香0.5g、姜汁10滴を分けて一緒に服用)。


強火で煎じ小量を何回も頻繁に服用させる。



 2.両天井穴・少商穴の針をして、宣肺助陽と解毒透疹する。



 3.蕎麦粉2両、卵白を同量合わせたものに香油を数滴垂らし、揉んで丸めて団子状を作り、何回も胸背四肢に揉みながら擦りつけ、抜毒透疹する。



 上法を3時間で合計、針を1回、全身擦りつけ2回、薬の服用を2回用いて、翌1時ごろになって体温が37.5℃に上昇し、四肢の冷たさは退き乳母が乳を飲ませたら少しだけ飲むことができた。痰や喘ぎは大幅に減り唇の色も淡紅となったが、両目を開け看護人を見て、か細い声で泣くなどまだ神情は酷く疲弊している。また薬を2回服用させると、夜明けに額と両頬に淡紅色の薄く疎らな発疹がでた。また薬を2回服用させ全身を3回揉み擦りすると、昼の12時ごろになって胸背・四肢一面に発疹が現れ、体温は38.5℃に達し痰と喘ぎはなくなり、陰証回陽で乳を吸う力は強くなり、昨夜から今までに13時間かかり小便が出はじめ危機を脱した。そこで中薬の服用を止め、鮮香菜1束・むきみの干しえび1つかみを煎じた湯を飲ませた。加えて麝香0.2g、鶏冠血1杯を服用させると、午後3時頃になって手足の中心に発疹が現れ、平穏に寝入った。上に述べた諸法は、針について“疹の性は透を喜び、透ざれば解せず”で、“透”の字が終始貫徹している。少女は誤治変証に属し陽虚毒陥である。故に参附湯・麻黄附子細辛湯・三拗湯・升麻葛根湯・小半夏加茯苓湯の合方を以って、益気助陽・宣肺化痰、托毒透疹し、加えて鶏冠血・黒荊芥穂で血に入った毒を外に追い出し、麝香が窮を開き汚れを排斥して活血解毒し、同時に呼吸衰弱の危険を避け、鮮香菜の辛香で透疹し干しえびは“発物”であり托毒透疹の効果がある。外擦療法は結局内部資料を河北小児科王岩谷医師研究所に紹介したが、皮膚毛細血管を充血させ、血行を旺盛にして腠理を疎通し、疹毒の外透を促すことができる。胸背を揉み擦ることで肺炎の瘀血水腫を軽減することができた。余が小児・成人の麻疹を千例以上の治療を経て、温陽法を用いたものはたった一人の少女だけで、臨機応変に属するとはいえたまたま偶然中の偶然であった。疹は陽毒であり辛温を用いることを忌み、陰分を傷つけ毒勢を転盛させるので、誤用は死に繋がり軽々しく試してはならぬ。もし気候が大寒で陽虚気弱な少女が、疹毒の阻遏により出難い場合は、暫くは人参敗毒散加芫荽の托透を用いことができ比較的穏当である。



 Ⅱ.霊石中学教導主任康宝琦の女学芳、3歳。1963年春に麻疹を患ったが体質壮健で、4日目になり疹はすでに大部分は透発したが、はからずもその母が月経来潮し、また子供を抱きかかえて外出していたため風寒及び汚濁の気に冒され、麻疹が突然廻らなくなり熱毒が内攻し、40℃の高熱と激しい咳嗽さらに急な喘ぎと鼻閉、唇と指は青紫になった。ペニシリンを2日用いるが無効で高熱は退かず反って精神混迷が強くなり、ひきつけ卒倒し甚だしいと角弓反張となった。校医に治療を求めたが、病程が7日を超過して血液中毒で呼吸循環衰弱して力になれないことを認めた。その時たまたま巧いことに病気の子供の伯叔母が余の子の乳母だった。消息を耳にしてそこで病気の子を抱えて治療を求めて家に来た。その子を診察すると、意識混迷ひきつけや急な喘ぎで胸が高なり、胸腹は手を火傷するほどの灼熱だが膝以下は氷のように冷たく、唇は乾いて裂け舌絳点刺、既に3日も乳を飲むことができず、大小便もともに出ていない。証は疹毒が内攻したあと臓腑の燻灼に属し、熱毒により肺が閉ざされたばかりでなく心肝にも内陥し、肝風内動を引き起こして神明を蔽阻しているが、幸いなことには水を飲ませれば咽を通すことができるので、力を尽くして救済しなければならない。先ず十宣・十二井を重刺して出血させ天井を瀉して以って透疹とし、人中を重刺し以って醒神開窮すると、病気の子は声を上げて泣き出した。そこで疎通の大剤人参白虎承気合麻杏甘石で通腑瀉熱、急下存陰、宣肺開閉する:



 1.生石膏200g、西洋参20g(別にとろ火でゆっくり煮る)、麻黄・杏仁・炙甘草・葶藶子・大黄・芒硝・皂角刺・桃仁・紅花・牡丹皮・紫草・赤芍角10g、蚤休15g、元参・芦根殻30g、大棗10枚。



 2.羚麝止痙散5g、牛黄・麝香・熊胆各1g、8等分し辟穢開窮・透疹熄風する。



 3.鶏冠血10ml、血分に入り疹毒を透発する。



 上薬を強火で煎じて400mlに芒硝を溶かして少しずつ注ぎ込み混ぜ、毎回散剤0.5gと鶏冠血3mlとを混入する。



 4.摩擦法、胸背を重点に。



 上薬を11時50分に煎じて服用を開始、午後2時10分までに4回服薬し2回揉み擦りすると、悪臭の粘液便を1回下し小便も通じると高熱が下がって38.7℃になり、下肢も温かくなって疹毒が外透しだし、全身に麻疹がまた出て喘息は収まり咳も減少した。午後4時安らかに寝入って呼吸も穏やかになった。晩の8時には全剤服用し終わるとまた2回下して、その後授乳を開始し危機を脱した。次の日に診察すると、舌は光絳無苔となり、精神疲労と気陰消耗が甚だしかった。西洋参10gを煎じた濃汁と、鮮芦根・鮮白茅根の煎湯に白糖を加えさらに鮮梨汁100mlを混入したものを、一日何回も服用させ、連続して3剤を服したところで全快した。



                                続く

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