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執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その33

李老中医 危急重症難病治療経験


その33



十四、小児舞踏病



  孟金娥、女、11歳。霊石仁義公社道阡村学生、1978年12月16日来診。病を患い1週間、全身が舞踏し片時も休むことがない。その症状は、首を捻っては頭を揺らし、舌を出しては舌打ちし、眉と目の筋肉が引きつり、四肢も揺り動かしていた。舌は短く話すことができないし、手は震えて物を握ることもできない、また脚は揺ら揺らしてきちんとした歩き方ができない。口は物を咬むような開閉が止められず、日常生活が一人でできない。食事をする時は人に食べさせてもらい、かつ必ずその口の部分を手で押さえて一定のリズムで開閉し食べさせなくてはならず、非常に苦痛である。52949部隊医院は“小児舞踏病”と診断し、激素・鎮静剤を用いさらに虫類の熄風の剤を併用したが無効だったので、省の一つの病院で入院治療をするように提言した。患者の両親は代々農村の社員で、生活困窮していたため余に診察を求めた。視ればその舌は光絳無苔、全身疲労し夜になると寝汗と煩渇があった。咽頭も舞踏のリズムに合わせてひきつけを起こすので、水を飲む時もむせ返り、脈は沈細数。その父の云うことによると、病気が始まった時にはかつての感冒のような発熱があった。今年は寒いはずの冬が反って温かく、晋南洪洞の南の桃の花が満開となった。症は発熱に由来し、温邪が久しく拘束されれば肝腎の真陰が焼き尽くされ、故に内風が妄動する。腎の経脈は舌本に絡んでいて、腎陰が損耗すると舌に上承できなくなり、故に舌が短くなって話すことが難しくなった。且つ肝腎は同源であって腎精の欠乏は肝木を滋養できなくなり、故に陽が制限されるところがなく風が動く。すなわち大定風珠を選び滋腎柔肝そして内風を消す:


  牡蠣・亀鼈甲各15g、生地黄・麦門冬各18g、阿膠12g、酸棗仁15g、炙甘草12g、天麻・五味子・遠志各10g、菖蒲12g、卵黄1枚(冲)を3剤。



  12月20日再診すると、舞踏の動きは既に止まっていて言葉も大分しゃべれるようになり、身の回りのことは自分でできるようになった。ただ寝汗が止まらず精神疲労し、腰がだるく膝に力が入らない。すなわち気陰がまだ元には戻っておらず、腎元も損なわれている。そこで原方から菖蒲・遠志・天麻を去り、かわりに山茱茰肉45g、黒小豆30g、生黄耆・腎四味各18gを加え5剤を服用させたら、学校へ行けるようになった。腰は腎の府であり、折れそうなほどの腰痛や腰がだるく膝に力が入らないなどの諸症状は、すなわち腎虚に基づくものである。証に随い腎十味(枸杞・菟絲子・塩補骨脂・仙霊脾・沙苑子・杜仲・塩巴戟天肉・仙茅・骨砕補・狗脊)を病症によって中の方剤を選び用いれば、その効は神の如くである。



張家荘炭鉱の学生祁秀芳、女、16歳、小児舞踏病を患って一月余り。1979年10月11日に診察を受けに来たが、ただ肘の痙攣が止まらず物がつかめない、また食欲不振と精神疲労し、腰痛して膝に力が入らない、脈細弱、舌苔白滑、痰涎がある。


この例は小児舞踏病の余波であり、傷ついたところは脾腎の陽で、そこで補中益気湯を与えて温陽肝腎し、竜骨牡蠣の斂固を以って佐とする:


    生黄耆・党参各30g、白朮・当帰各15g、柴胡・升麻各5g、炒麦芽60g、腎四味各15g、炙甘草10g、生竜骨・生牡蠣各20g、鮮生姜5片、大棗6枚、胡桃4枚。


上方を6剤服し癒えた。



                              続く

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