李老中医 危急重症難病治療経験
その36
二、巨型膵腺嚢腫
劉文我の娘小婷、16歳、1991年車輌事故で脾が破裂。手術後5日目に腸捻転が発生し、二度目の手術後一カ月、左上腹部に膨隆が現れ左肋骨下は刺すように痛み、抑えると波浪感があってそれが日増しに増大する。気が塞がり胸悶し、脹れて横に寝られず呼吸もできない。腫れ物の左は鋭く突き出て上は12番目の肋骨から下は鼠蹊部の上方まで、その出っ張りはまるで妊娠様の如くである。県医院の外科は開腹検査し管を挿入し吸引するつもりだが、余に治療を求めた。腫れ物は外傷に由来し必ず絡脈の損傷であり、死血の集積が癥を形成して湿痰となったのである。复元活血湯が良く打撲損傷や肋骨下に流れた悪血をなおす;桂枝茯苓丸は癥瘕積聚に有効な処方であり、先人の知恵より以下の一方:
柴胡15g、当帰30g、赤芍25g、甘草・大黄・酒香附・紅花・澤蘭叶各10g、丹参30g、桂枝・桃仁泥各15g、茯苓45g、牡丹皮15g、肉桂・蘇木・猪苓・澤瀉・木香・枳殻各10g、炮甲珠6g(研磨して冲服)、2回水煎しそれに黄酒2両を均等に混入し、さらに沸騰煎じたものを2度に分けて服用する。
薬を1剤服用したところで天津から電話があり、天津医学院付属医院外科に赴いた。CT検査によって確定診断は膵腺嚢腫16.5×22㎝で手術摘出が決まった。専門家の会診で患者の失血過多による不測の事態を考慮し、調養恢復をもう一度再考してもらうように意見した。やっと霊石に帰ってきたが、往復で疲れ込んでしまい気虚の出現はこの現象を支えきれない。原方に紅参・霊脂各10gを加え3剤服させると、二便は滞りなく出て腹中からは音が聞こえ頻繁に放屁し、小便は特に多量に出て大変緩やかになり横になって寝られるようになった。連続して9剤、合計12剤を服用したら、あれほど盛り上がって大きいわだかまりが消えてなくなった。晋中一院に赴き再度CT検査をしたが腫物は消失し全快した。
三、子宮筋瘤
林業局幹部家族の燕能荷、44歳、1983年7月13日初診(問診番号009319)。晋中二院の婦人科検査で子宮筋瘤(9×8㎝)と診断され、あとで心配がないように手術切除を意見される。患者は怖くなり、ただそれだけで来診した。腹診をすると少腹が妊娠5カ月ほどの大きさに脹れ、臍下に拳大の円形腫れ物がある。月経痛は5カ月で毎月の月経は不調、月経色は黒く粘調で血塊甚だ多く滴り続け、延々10日以上も止まらず月経期は酷く脹れて絞痛がある。顔色は暗く舌淡紅、脈弦。有刑の癥瘕で既に一日の猶予もなく、桂枝茯苓丸加虫類を与え取り除くためにゆっくり攻める:
桂枝・桃仁・牡丹皮・赤芍各15g、茯苓45g、柴胡・紅参(別にとろ火でゆっくり煮る)・霊脂・土元・甘草各10g、貝母15g、生水蛭・炮甲珠各6g、蜈蚣2条を粉にして黄酒にて冲服を10剤。
8月11日二回目の診察:前回投与した桂枝茯苓丸は癥積をゆっくり攻め、紅参・霊脂は扶正化瘀し、虫類が絡脈に入り削り落す作用をして、10剤進めたら少腹の膨隆状態が大きく減り、腹の張りもすっかり緩くなった。今ちょうど月経期であるが腹痛はなく、黒い塊が少しだけで脈沈滑、舌色暗、成行きをみてうまく導く通経化瘀が治である:
桂枝15g、茯苓45g、赤芍25g、桃仁・牡丹皮各15g、益母草・当帰須・丹参各30g、柴胡・酒香附子・澤蘭叶各12g、川牛膝30g、甘草10g、生水蛭・炮甲珠各6g、蜈蚣2条、を粉にして黄酒にて冲服、鮮生姜5片、大棗10枚。
8月16日三回目の診察:上方を続けて3剤服用し月経は順調になり、瘀血塊は甚だ多く出て少腹の妊娠の如くの状態も消えて、腹痛もすでに除かれた。最近は白帯が多く脈舌も以前の様になった。初診方に生山薬30g、車前子10g(包む)を加えて与える。
8月31日四回目の診察:少腹は普通の人の様に平らで軟らかくなったので丸剤で緩やかに攻める:
桂氏茯苓丸各30g、当帰須・土元・貝母・炮甲珠各30g、太子参60g、霊脂30g、生水蛭15g、蜈蚣30条を10gの蜜丸にして一回一丸、一日三回服用。
9月16日五回目の診察:丸薬を服用して半月、当院にて超音波検査したところ子宮は5×8×5㎝で筋瘤は消失していた。1984年3月15日に再び超音波検査を実施したところ子宮は6×5㎝で正常であった。1984年5月まで、上記の方法で子宮筋瘤17例を治療し、唯一外省患者の情況不明を除き、皆治癒を得た。凡そ瘀積重は顔色暗黒で眼の周りが黒っぽく口の周りも紫暗で、手足心・前胸・後背が発熱するときは血瘀発熱であり、酒大黄10~15gを加え服用させ、三五日で熱が退けば大黄を除く、これは即ち大黄ジャ虫丸の意である。正虚には党参・霊脂を加え、虚が甚だしければ紅参を用いる。4種の虫類薬は軟堅散結し化瘀力が強い。生水蛭は破瘀するための第一要薬で、瘀血を破りしかも新血を傷つけない。瘤体の大小が判別でき病程が長い時には3~6gを用いる。炮甲珠の穿透走竄性はすべてに行き届いていて、凡ての血瘀血凝をみな開くことができかつ白血球作用を高め、体を補いながら攻める不思議な働きで無駄がない。任脈は肝に隷属し血瘀の者は必ず気が滞るので、柴胡を加えて肝気を疏達する。貝母は消痰軟堅し病程を短縮する。また卵巣或いは輸卵管嚢腫は、多くは胞宮瘀阻・寒湿凝聚からで、余は桂枝茯苓丸合五苓散に温陽化湿の油桂を加えて治す。もし少腹がしょっちゅう絞痛する時は、多くは寒凝に属すから呉茱茰15gを加えれば、直ぐに肝経血分に入り破冰解凍するので、更に速く効果が出て収まる。加えて子宮専薬の益母草は丹参・澤蘭叶と協力して、子宮血の循環を強め炎症性の滲出物の排泄と吸収を促進し、炮甲珠の透達嚢腫と五苓散の利水を加えれば、多くは半月以内に治癒させることができる。清熱解毒薬は慎重に用いねばならず、もし不当に用いれば反って寒湿が凝結し化すことができない。
続く
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