李老中医 危急重症難病治療経験
その39
八、流産の前兆
(一)
張×娥、23歳、某工場女工。1967年10月7日急診。妊娠2カ月、昨晩就寝後に少腹が灼熱そして痛み、明け方の5時に出血し7時間経っても滴り止まず、出血色は鮮血で煩熱と口苦し、折れんばかりの腰痛と動悸がして落ち着かない。脈弦滑数、120拍/分、舌紅少苔。節度のない房事によって冲任脈を損傷し、相火が妄動したため胎漏下血となった。冲任脈は腎肝に隷属し、腎は受胎の本であり脾は統血と載胎を主どるの で、今血熱妄行すると胎気を損傷することになるが、幸いまだ堕胎には至っていない。摂血を以ってその気を俊補し、滋陰清熱し固胎する:
生黄耆60g、当帰・白芍・九地・紅参(別に弱火でゆっくり煮る)・煅竜骨牡蠣・阿膠(別に化)・苧麻根・白朮各30g、黄芩炭15g、桑寄生・川断炭・杜仲炭・菟絲子・塩補骨脂各30g、艾叶炭・炙甘草各10g、三七3g(研末にて冲服)、胡桃(打)4枚。
煎じて取った濃い汁600mlを3回に分け3時間に1回服用。
8日朝再診すると、昨晩12時に2回目の薬を服用した後出血は止まり、動悸・腰痛もまた治った。脈斂、尺部弱。顔色は艶のない蒼白に変わり、舌上には薄白苔が出始めたが食欲不振なので、原方から九地・竜骨牡蠣・黄芩・三七を去り、三仙炭各10g、姜炭5gを加え3剤を服用させるとすっかり癒えて、そのまま順調に産み月を迎え一人の男子を出産した。
注釈:本方は当帰補血湯を以って生黄耆を重用し紅参を加えて、補気摂血を以って載胎となす;膠艾四物から川芎を去り滋陰養血・止血を以って安胎となす;寿胎飲(桑寄生・川断・菟絲子・阿膠)合青蛾丸(杜仲・塩補骨脂・胡桃)は補腎益精で冲任脈を固め固胎となす;白朮・黄芩は安胎の聖剤で善く血熱妄行の胎漏下血を治す;苧麻根は止血安胎の専門薬で三七は止血に最も優れている、これら諸薬を相合して陰虚内熱・血熱妄行の胎動下血に対して投薬すれば特効がある。出血多き者は保胎と発育を正常にするため、止血後に泰山盤石散(紅参・黄耆・当帰・白朮・九地・白芍・川断・砂仁・糯米・炙甘草)に紫河車・魚螵膠蛛・亀鹿膠を加え粉にしてカプセルに充填し1回6粒、一日2回連続して服用すれば固本できる。
(二)
和平、22歳、双泉峪村農民。妊娠2カ月、1987年10月14日朝突然出血して止まらず、出血量多く色は淡、気喘し四肢は涼、少腹隠痛墜脹し腰痛にて寝返りもできず、食欲は少なく胃酸が湧きあがり顔色は萎黄で艶なく、舌淡で歯痕があり脈数かつ弱、120拍/分。聞いて判ったことは生まれつき体が弱く訳もなく歯茎から出血した。これは先天不足に属し、腎の封蔵が失われ脾陽が虚衰したため、摂血載胎ができない。
生黄耆45g、酒洗当帰身・酒炒白芍各25g、紅参30g(別に弱火でゆっくり煮る)、三仙炭・姜炭・醋艾炭・柴胡・蘇梗・砂仁・荊芥穂炭各10g、阿膠20g(化入)、煅竜骨牡蠣各30g、桑寄生・炒川断・菟絲子(酒泡)・青蛾丸各30g、炙甘草10g、白朮30g(黄土炒焦)、三七3g(研末冲服)。
煎じて取った濃汁600mlを6回に分け3時間毎に日夜連続して2剤を服用。山茱茰肉100mlを煎じた濃汁をお茶代わりに飲む。
10月15日二回目の診察:腹痛と出血はすでに止まり食欲も出てきた。脈滑弱80拍/分。まだ腰痛・気短・畏寒を感じる。泰山盤石散から九地・黄芩・糯米を除き紫河車・鹿茸・鶏内金・焦三仙・魚螵膠蛛・亀鹿膠を加え粉にして一回3gを一日2回服用する。上薬を合計3か月弱服用して体質は改善し、順調に産み月を足して無事女の子を出産した。胎動下血は脾の不統血に属す者が一番多く、この型の患者は飲食を運化できないだけでなく薬力の運載も難しい。故に煎じた薬剤を少量ずつ何回も服用させる方法が適していて、薬物の血液濃度が保持され病人の消化吸収によく穏やかに奏功する。この型は全ての寒涼滋膩・清熱止血などの品を用いてはならず、一旦滑瀉が出現するとそれは必ず堕胎となってしまう。
続く
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