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執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その46

李老中医 危急重症難病治療経験


その46



二、老年性高位腸梗阻


  王万林、男、65歳、外科入院の病人。急診で入院して5日、病程は半月ほど。発病して直ぐに菔通と嘔吐が現れ半月ほど排便も放屁もない。腹は太鼓の様に脹れ時々絞痛し病床で転げまわっている。外科の診断では老年性の腸梗阻である。胃腸減圧や浣腸をしても無効で手術の準備をしている。患者は高齢で体が弱く、また脱水症状も酷く心臓機能も良くないので恐ろしく難しいことを考慮し、中医の協同治療を要請した。


  患者を診察すると焦悴しきって眼眶は落ち窪み、極度に痩せているが腹だけは鼓の様に脹れて、すでに半月米粒を食べていない。舌苔黄厚膩、脈滑無力。高齢で大病に匹敵し、邪実正虚なので峻攻には耐えられない。硝菔湯に扶正破滞の品を合わせる。


  一、生白大根5kg、芒硝240g;


  二、紅参(別に弱火でゆっくり煮る)・代赭石粉・厚朴・檳榔各30g、旋覆花15g(包)、枳穀10g(炒)、木香・沈香各3g(研磨汁を混入)。


  それぞれ法にのっとり煎煮し、両汁を均等に混ぜ合わせ2時間に1回、毎回200mlを連続して服用させ便が通じれば停薬する。


  次の日診察で知ったのは、昨晩8時に1回目を服用しその15分後まず臍の周りで絞痛を感じ、続いて直ぐに気が上下にゴロゴロし腹中では雷の様な音が、皆に聞こえるくらい部屋中に響き渡った。約40分後頻繁にゲップが始まり放屁も停まらない。三焦の気機昇降はすでに回復し腹腸は大幅に減った。また薬汁200mlを服用すると、1時間後には腹中がひとしきり強く痛み、続いて直ぐに団子状の結糞に極めて臭い糊状を含んだ大便を甚だ多く下し、全快して退院した。この例は服薬から便通まで僅かに2時間10分しかかからず、服薬も全体の半分弱だった。


  



三、化膿性闌尾炎と重症の腹膜炎の合併


  水峪嘼医院楊友三の子、楊建強、14歳。1984年9月16日夜中の2時に緊急入院。確定診断は“急性化膿性闌尾炎と彌漫性腹膜炎の合併症”で白血球15900・中性球90、大量のペニシリンを投与したがコントロール不能。高熱の39.5℃が持続し退かず意識は混沌。すでに手術が決まっていたが家長が不同意。17日中医の協力を要請。上記の如くの証が現れて、恐れることは熱毒が心を攻め脳が犯される心配があることである。攻毒承気湯を加減して与え釜底抽薪し、清熱解毒で排膿する:


  二花120g、桃仁・牡丹皮・紫草各15g、生石膏30g、冬瓜仁60g、生大黄(後下)、甲珠・皂角刺・甘草各10g、蚤休15g、生薏以仁45g、芒硝24g(冲)、三七粉10g(冲)。


  上方2剤を一昼夜連続して2時間毎に1回服用させ、心地よい瀉下があれば芒硝を去る。


  9月18日二回目の診察:熱は退き闌尾の圧痛及び腹全体の激痛もすでに8~9割なくなった。処方を改め《弁証奇聞》の清腸湯を2時間に1回投与する。


  9月19日三回目の診察:腫痛は全てなくなり起き上がれるようになった。昨日の処方をもう一剤投与する。


  9月20日全快して退院、清腸湯を2剤持たせ以って余毒を清くする。


                                           続く



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