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執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その48

李老中医 危急重症難病治療経験


その48



五、急性子宮内膜炎



  郭玉梅、女、31歳、炭鉱工夫の家族。1967年10月9日急診。患者は月経が終わった翌日に公衆浴場へ入浴し、その夜に少腹に針で刺されるような脹痛を感じ、汚臭のする灼熱の帯下と腰痛がして、夜半には悪寒戦慄が始まり体温も39.5℃の高熱になったので自分で鎮痛片の四環素6片服用後汗をかいたので寝た。今朝起床後も頭痛と吐き気がし体温もまた39.7℃に戻った。炭鉱医院はペニシリン注射80万単位10本とアンナイジン2本を打って楽になった。しかし12時には破れんばかりの頭痛と噴射状の嘔吐が起き高熱も40℃に達した。黄色汚臭の帯下もさらに多くなって血も混ざり、少腹の絞痛で近寄ることもできず意識は混迷し、歯を食いしばり時々引きつけも起こした。脈滑数、舌苔黄厚膩、口中から悪臭あり。炭鉱医院の診断は子宮内膜炎と盆腔膿腫で、すでに膿毒敗血症にまで発展しているとした。症状は重く甚だ危険で一刻も早い県医院へ緊急配送の意見を出したが、患者の夫の劉守珍は中薬治療を頑なに変えなかった。そこでまず三稜針を以って重刺して出血させ、両尺澤から黒血10mlを抽取し、針で素髎・合谷に瀉方を施すと患者は全身から発汗し息を吹き返し嘔吐も止んだ。そこで書簡は方案を求めていた:症は月経の後の入浴で、汚濁で不潔な物が前陰から侵入しそれが湿熱となり毒と化し、胞宮血室に結び熱極動風となって、神明を上犯した。攻毒承気湯で熱毒を完全に消し去り病勢を止め危急を挽回する:


  二花240g、芙蓉叶・連翹・生大黄・柴胡・生薏以仁各30g、蒼朮・黄柏・蚤休・牡丹皮・紫草・桃仁各15g、冬瓜仁60g、漏芦12g、炮甲珠・甘草・車前子各10g(包)、川楝子30g、醋元胡6g(研磨粉冲服)、芒硝30g(別包)、白酒100g、これらを1時間冷水に浸した後強火で10分煎沸し、出来た汁3,000mlを1回300mlずつ2~3時間毎に服用、同時に冲化芒硝10gと元胡粉1.5gを服用し、瀉が得られれば次回からは芒硝は除き使わない。一気に昼夜分かたず時間通りに連続服用させ、以って病勢を遮断する。


  患者は夜の7時から1回目を服用し始め、8時頃には悪臭を伴う便が1回あり腹痛は止んだ。9時に続けて1回服用すると11時には体温が38.5℃に下がり黄色帯下も薄く変わった。夜半2時には体温37℃となり患者は寝入った。余は一晩観察見守り翌朝までに合計6回、1剤の2/3弱まで服用し、諸症状はすでに8~9割癒えたので余った薬は使わないので捨て去るように言いつけ、清腸飲3剤を投与した。余が9時に双泉峪を離れるため保健駅に戻ると、患者はすでに起き出て見送ることができた。患者が自ら服薬を開始し基本的に全快に至るまで12時間、薬代は10元足らずであった。余は農村の条件下で多くの危機的重症急性腹症を治療してきたが、成功を得られた経験から今まさに上方の型が定まり、その名を“攻毒承気湯”とした。30年の歴史の中で資料は散失してしまったので正確な統計を作ることは難しい。上に述べた病症以外では、急性膵腺炎・重症肺膿瘍・疑肝腫瘍・外科創傷毒血症などもみな治癒した。本方は配薬の困難な農村から始まり、1剤の薬で20時間以内に一つの大病を解決する様に設計した、故に用量が多くなった。90%以上の病人は一


剤の薬を服用し終わる前に殆ど全快する。



六、腸梗塞術後粘連性不全梗阻



  


  李増仁、男、37歳、壇鎮孫家溝農民で外科に入院中の病人。1984年1月14日外科は余に治療協力を要請した。病歴記載、患者は2年前に腸梗阻の手術をした。今年の冬至の後にまた粘連性の不全梗阻が発生しすでに入院は20日にわたり、頻繁な嘔吐や休みなく続く腹痛、大便は通じたり通じなかったりで、すでに25日も食べることができない。体は痩せ細り疲れ果て立つこともできず、動けばすぐに息切れがする。脈大で按じると散り、舌紅中根は燥乾。これは中気が虚となり運化しなくなったことで、胃液が枯れ和降を主どれないことによる。益気降逆、増液行気を与える:


  生黄耆90g、紅参20g(別に弱火でゆっくり煎じる)、生地黄30g、元参60g、麦門冬90g、厚朴30g、沈香・ 木香各5g(研磨汁を混入)、代赭石粉50g、莱菔子30g(生と炒を各半分ずつ)、生姜汁10ml混入、2剤。


  当日服薬後、腹中は雷の如く響き渡り吐き気は止んだ。正午には食事を開始し、午後2時に便通があって腹痛も止まった。次の日また1剤服用しすべて平常に回復したが、ただ息切れと体に力が入らない感じが残った。すでに退院の手続きを終わり、特に中医外来まで来て余に別れを告げた。補中益気湯加麦門冬30g、五味子10g、3剤を予後治療として与えた。



  注釈:一切の痞塞不通の症を治すに、重きは“気”を治すことにある。百病はみな気から生じ、三焦の気化昇降の枢紐は脾胃にある。故に気を治す要は、脾の升と胃の降が巡らないに過ぎない。脾が宜しく昇ればすなわち健やかになり、胃が宜しく降りればすなわち和む。もし六淫の外邪や飲食の内傷によって、脾気が下陥し胃気が上逆すればすなわち阻隔不通の病となる。甚だしければ気機は逆乱し升があっても降がなくなり、上から入らず下からも出ない格別の病となる。これがすなわち腸梗阻の成因である。格別な大病を治すには掃討攻堅の剤を用い、必ず気薬を以って帥とする。大承気湯(大黄四両、厚朴半斤、枳実五枚、芒硝三合)のように四味薬のうち気滞を破る薬が半分を占め、厚朴が大黄の二倍となっているし張氏の硝菔通結湯の二味も芒硝4両、白大根5斤となっている。白大根は野菜で四季を通じて手に入り廉価である。性は温で、生は升で熟は降、一物で升降気機の効能がありまた食療としても上品である。生で食せば咽を下げ噫気やしゃっくりに速効があり、胸を広げ気を昇らせ上焦を先に通ずる;熟で食せばすなわち放屁やゴロゴロの腸鳴、下気などを極めて速やかに二便を通利し、中下二焦を通じることができる。芒硝と白大根とは同時に煮れば堅軟潤下の作用があり、白大根の濃汁を以って気の高ぶりを落ち着かせ、腸の蠕動を加速するのが最も早いししかも正気を傷つけない、故に重症・虚症の腸梗阻には最も理想的である。


  手術後発生する腸粘連或いは不全梗阻或いは尿閉などは、さらに気虚の病となる。気虚失運はすなわち窒塞不通で当に塞因塞用、人参黄耆を多量に用いて元気を大補する。小量の木香を佐として沈香研磨汁を混入し大気の流転を助ける。莱菔子はすなわち白大根の成熟種子で白大根と同じ性をもち破気消痰の“壁を押し倒す効果あり”で、多量の人参黄耆を以って帥そして統となし、その善く通の特長を発揮し開破の弊害を制して害なさしめない。再び代赭石・厚朴を加えて胃逆を降ろし、液が枯なるものには多量の増液湯を合わせて増水させ、また三焦の気化を迅速に回復させ閉塞を突破し諸症を治癒に導く。手術後各臓器の粘連の患いを治すために用い、症によって加減すれば効果は極めて良好である。気虚の者は脹悶を感じる場合が多く、気虚下陥症になれば脹悶はさらに酷くなる。疏散ができず更に開破もできないとき、その気を峻補し気が足りればすなわち升降の運旋は正常に回復し脹悶は自然と消える。       


                                            続く

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