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執筆者の写真kampo shinsendo

中医火神派 李可老中医医案翻訳 その6

李老中医 危急重症難病治療経験集


その6



肺心病における急性感染症



  郝根生、61歳、南関鉱退職工。1983年9月5日県医院中医科門診病例。心電図:欠損性心臓瀕脈(脈拍132拍/分);Ⅱ度二型心房欠損伝導阻滞。内科診断:肺心病における急性感染症。病歴:気管支炎の病程が38年、さらに肺心病にまで進行して8年。患者は1階から2階の中医科まで付き添い人がいてもなお6分かかり、肩で大きく息をしながらやっと話を始めることができた。7日前患者はひどい感冒を患ったあと、無汗と喘息、胸悶、痰は黄色で粘調、五六日便秘、動悸、脈洪数、時に止まる、舌乾紅白膩、舌中と舌根は黄となった。元から痰喘の疾患を宿し、痰湿が中を阻害しているところへ外から風寒に襲われ疎解が失調し裏が化熱した、この状態を断つには「急なれば標を治す」で:


  生石膏・瓜萎・生半夏各30g、麻黄・杏仁・五味子・細辛・厚朴・桂枝・白芍・炙甘草各10g、帯殻白果打21枚、炙紫苑・炙冬花各12g、竹瀝膏100ml、生姜汁10滴(対入)、鮮生姜10片、大棗10枚、これらを2剤。


  この方は小青竜湯・麻杏甘石湯・厚朴杏仁湯の合方の変方で、散寒解表と清熱滌痰定喘の効果がある。


  9月9日二回目の診察、薬服用後発汗し便が通じ、咳喘は七八割方減った。脈滑大・胸中発熱があり、前方に魚腥草30gを加え清熱解毒する。肺部の感染残存の滲出物を清除する。患者は薬2剤を持ち家へ帰り静養。


  9月19日三回目の診察、患者は南関より来院、病はすでに良好。ただ最後の2剤を服用後、精神が疲れ眠気を感じ胃と口が涼しく、食後に胃の調子が悪く酸っぱい液が上がるという。脈を診ると力のある弦脈でほんの少し緩の象がある。患者は齢六十を過ぎ、苦労の一生の上長患いで体力を消耗し、腎の元が不足するのは必然である。この次に病に罹かったとき、本は標熱本寒に属し、薬剤を投与後7~8割がた治ったら、その時に温養脾腎すれば元気を回復する。慎重でなかったし詳しく検討せず寒涼剤を投与しすぎて患者の脾腎元陽を損傷してしまったことは叱られてもしょうがない罪を犯してしまった!まだ変証が現れてはいないし収拾がつかないことがいっぱいあるが、ただ脈象が力のある弦だが老人の良いところがなくすでに真気が内を守れない象で、精神の疲れと眠気感じるのはすなわち“少陰病ただい寝んと欲す”に少しずつ変わっている予兆である。そこで四逆湯に紅参・山茱萸肉を加えた加味方を一日おきに1剤ずつ連続して10剤服用させ、薬の誤用を救った。その後今年の陰暦12月、患者が正月用の商品や不動産の買い入れに来た時は、顔色は紅く艶があってステッキは使わなくなっていた。更に今年の冬はただ一枚のセーターだけ着て、それでいて寒くないと云った。禁煙した後は食事の量も増え、咳喘は二度と起きていない。患者はとても健康に見え私は心から安心した。


  ほかに、方中で白果またの名を銀杏は味甘、微苦・渋、肺・腎経に入る。効能は肺気収斂、定喘止咳、止帯除濁、縮小便で、痰嗽・哮喘の要薬である。果仁には少し毒性があり摂り過ぎると酔った時のように頭がくらくらする。南方では白果を煮て食べたりするが、常に食べていると中毒を起こし一連の中枢神経症状、たとえば頭痛・発熱・驚倒不安・嘔吐下痢・呼吸困難などが現れ……救治が及ばず間があいたりして死亡する者もいる。救急の方法は、生甘草60g・白果殻30gを煎じ、緑豆粉30g・麝香0.3gと一緒に服用すれば解毒できる。これによって白果殻が白果の毒を良く解毒することが分かる。ゆえに白果を薬として用いる時には殻を打ち砕き、それと黄色く炒った果仁と一緒に煎じれば意外にも副作用の発生を避けることができる。白果の性は収渋で、表が実なら麻黄と一緒に用いて一散一収となり、痰喘を治すのに極めて有効である。

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