食欲不振 その1
「空腹感がない」「味がしない」「少ししか食べられない」「少し食べるとすぐ満腹になる」――。
食欲不振にはさまざまな表現があります。
からだの異常のすべてが食欲不振の原因となります。
その原因を的確にとらえて治療を行うことが大切です。
中医学からみた食欲不振
食欲不振は、消化器の働きがおとろえておこる
中医学では、食欲不振は、飲食物を消化吸収する「脾胃」のはたらきが低下したり失調するためにおこると考えます。
「胃」は、飲食物を受け入れ、消化して、生命活動に欠かせない滋養物質である「水殻の精微」をつくります。
また、消化した残りかすである「濁」を小腸や大腸におくる「降濁」も胃のはたらきです。
「脾」は、胃でつくられた滋養物質を吸収して上昇させ、全身におくる「昇清」というはたらきを持っています。
このように、上昇と下降という正反対のはたらきをもつ脾と胃が協調し統一して活動していれば、食欲がわき、おいしく食べられます。
しかし、一方のはたらきが低下すると、もう一方のはたらきも低下します。
たとえば、脾の昇清が低下すると、胃の降濁が上に逆流したり、昇清が低下して降濁だけがはたらく「昇降失調」の状態となり、さまざまな障害がおこるため、食欲が不振になります。